コメディかと思ったらシリアスな話で、最後はハートフルに終わった。
しかし読み終わってから残ったのは悲しさだった。
殺し屋である主人公の内なる声が、自分にこう語りかける。
ルールを守らず、他者の命を奪ってきた自分が、幸福な家庭を築けるわけがない。いつ崩壊してもおかしくない、といった恐怖心があって、だから、妻を必要以上に恐ろしいものと位置付けることで、自分を戒めている、警告を発しているのではないでしょうか。
心理学でいうところの投影である。
何かにおびえている時、おびやかしているものの正体を見誤ることがある。
それは自分の罪悪感だったり虚栄心だったり、こころの「痛いところ」にあることが多い。
自分でそれを乗り越えることはむずかしい。
まるで呪いのように体と心に絡みついているからである。
主人公は不幸せではなかったが、この呪いを解くことはできなかった。
それがどうしても悲しいと思ってしまう。