毒親の原因は伝統的な家父長制

子育ては連鎖すると言われています。
毒親になってしまう背景には一体何があるのでしょうか。


文化的背景:家父長制


親が毒親になる原因の一つに、伝統的な家父長制があると、筆者は考えます。

【家父長制とは】
家父長制とは「父系の家族制度において、家長が絶対的な家長権によって家族員を支配・統率する家族形態。また、このような原理に基づく社会の支配形態(引用:デジタル大辞泉 コトバンクより)」のこと。


制度上は廃止されていますが、人々の価値観の中に深く根付いています。

 例えばこういったことを「普通」だと考えてしまってはいないでしょうか。

・女性は男性を立てるのがあたりまえ
・家事・育児は女の仕事
・男は働き、女は家を守る


 こういった感覚は人間の不変の習性ではなく、家父長制の元で肯定されてきた価値観なのです。

家父長制が毒親を生み出す


「女は男に従うべき。子供は親に従うべき」という家父長的価値観はいたるところで歪みを生み出します。

まずは父。
仕事の競争に勝つことが至上命題。
「男らしさ」にこだわるため泣き言を言えず、感情のコントロールができない。
家庭内では妻にすべてを押し付け、育児に関することは他人事。
妻や子供が自分を立てるのを当然と考えます。
女子供を対等な人間とは見ません。

そして自己犠牲を強いられ、子育ての重責を一人で背負う母。
共働きだとしても家事はすべて母の役割。
子供のしつけも母の責任。
そのため、子育ての「失敗」により母親役失格の烙印を押されることに強い恐怖を感じています。
そして「家庭のためにすべてを犠牲にしてこんなに尽くしているのに」と自分の人生を生きられなかった悔しさをつのらせ、子供へのコントロールを一層強いものにします。

このような階層構造の歪みは、一番弱い存在である子供に重くのしかかります。

家庭の一番の犠牲者は子供です。
子供は父の所有物、母のしつけの成果物とみなされます。
人間としての個性に目を向けてもらえることがありません。

このような家庭では、親子関係が健全なものではなくなってしまいます。

 家父長的家庭での対等な人間関係の難しさ


家父長制の下では、父も母も子も、対等な関係ではありません。
一種の主従関係です。

本来健全な親子関係と言うのは、「養育者ー被養育者」「青年ー未成年」などの立場による役割の違いはあれど、人間的には対等なはずです。
健全な家庭では、子供はその対等な人間関係を通して安心感・信頼感・自己肯定感などを学んでいきます。

家父長的な家庭ではその機会が奪われてしまいます。
子供の人生は苦難の多いものになってしまうでしょう。

家父長制は日本文化の問題

家父長的価値観は2020年の現在でも、日本社会に蔓延しています。
意思決定権を握っているのが高齢男性に偏っていることがその理由の一つです。
私は、日本全体がまるで一つの毒親家庭のようだと思うことがあります。

そのような背景を踏まえると、毒親家庭というのはその家庭だけに原因があるのではなく、文化によって生み出されていると言うことも出来ます。
そういった意味では、毒親になる親もある種の被害者であると言えるかもしれません。
(だからと言って子供にしたことが免責されるわけではもちろんありませんが)

親を憎めないなら家父長制を憎んで

毒親に育てられた人は、親を嫌うことに罪悪感を持ってしまいます。
もしそのような場合、親そのものではなく、その背景にある家父長制を憎んでみてはいかがでしょうか。
自分の苦しさの原因を知ること、そして「それのせいにすること」は、よりよく生きるための助けになるはずです。

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